『デフ・ヴォイス』に連なる感涙のシリーズ第二弾。
荒井尚人は、ろう者の親から生まれた聴こえる子──コーダであることに悩みつつも、ろう者の日常生活のためのコミュニティ通訳や、法廷・警察での手話通訳に携わっている。
場面緘黙症で話せない少年の手話が殺人事件の目撃証言として認められるかなど、荒井が関わる三つの事件を優しい眼差しで描いた連作集。
解説=頭木弘樹
※コーダ(CODA Children of Deaf Adultsの略)…ろう者を親に持つ聴者のこと。
言語とは、家族とは何かを、手話通訳士を通して描いた傑作連作ミステリ第2弾です。
第一作『デフ・ヴォイス』から二年後が舞台となっています。
主人公である手話通訳士の荒井尚人は、コミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳をする生活を送っています。
■第一話「弁護側の証人」
被害者をと脅し強盗容疑で逮捕されたろう者の話。
■第二話「風の記憶」
ろう者がろう者に対して詐欺行為を行った事件の話。
■第三話「龍の耳を君に」
表題作でもある本作では、主人公は緘黙症の少年に手話を教えることになります。
積極的に手話を覚えていく少年はある日突然、殺人事件について手話で話し始めます。
NPO職員の男が殺害された事件の現場は、少年の自宅から目と鼻の先だったのです…。
緘黙症の少年の証言は果たして認められるのか?
ろう者と聴者の間で苦悩する手話通訳士の優しさ、家族との葛藤を描いたミステリ連作集です。
■著者略歴
丸山正樹(マルヤママサキ )
1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。
シナリオライターとして活躍ののち、松本清張賞に投じた『デフ・ヴォイス』(文藝春秋、2011年/のちに『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に改題。文春文庫)でデビュー。
同作は書評サイト「読書メーター」で話題となり、シリーズ第二弾『龍の耳を君に デフ・ヴォイス』、第三弾『慟哭は聴こえない デフ・ヴォイス』も好評を博す。
他の著書に居所不明児童をテーマにした『漂う子』(文春文庫)がある。
にこ〜るブログ『龍の耳を君に』紹介ページ
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