何と人間的な優しさに満ちた物語なのだろう。
闇が深いほど差しこむ光は尊く美しい。
研ぎ澄まされた感性で紡がれた
言葉は極めて雄弁だ! (内田 剛氏 三省堂書店有楽町店)
「私たちはここにいる」
ろう者が抱える様々な困難を手話通訳士の視点から描く、感動のミステリ
コーダである手話通訳士・荒井尚人が関わる四つの事件を描く、温かいまなざしに満ちた連作ミステリ。
社会的弱者や、ろう者の置かれた厳しい現実を丁寧な筆致であぶり出した短編集。
『デフ・ヴォイス』『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』に連なる〈デフ・ヴォイス〉シリーズ第3弾。
■目次
1)「慟哭は聴こえない」
ろう者の妊婦から医療通訳の依頼を受けた手話通訳士・荒井尚人。
専門知識が必要で、しかも産婦人科であるために苦戦しながらも丁寧に対応したのだが、翌日、彼女からSOSが届き──。
ろう者による110番や119番のような緊急通報の困難を問題提起した表題作。
2)「クール・サイレント」
3)「静かな男」
何森刑事と共に、急死したろう者の男性の素性を探る旅路を描く、シリーズ随一の傑作。
4)「法廷のさざめき」
旧知のNPO法人から、荒井に民事裁判の法廷通訳をしてほしいという依頼が荒井尚人に舞い込んだ。
原告はろう者の女性で、勤め先を「雇用差別」で訴えているという。
かつて似たような立場を経験した荒井の脳裏に、当時の苦い記憶が蘇る。法廷ではあくまで冷静に自分の務めを果たそうとするのだが――。
■著者略歴
丸山正樹(マルヤママサキ )
1961年東京都生まれ。早稲田大学卒。
シナリオライターとして活躍ののち、松本清張賞に投じた『デフ・ヴォイス』(文藝春秋、2011年/のちに『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に改題。文春文庫)でデビュー。
同作は書評サイト「読書メーター」で話題となり、シリーズ第二弾『龍の耳を君に デフ・ヴォイス』、第三弾『慟哭は聴こえない デフ・ヴォイス』も好評を博す。
他の著書に居所不明児童をテーマにした『漂う子』(文春文庫)がある。
にこ〜るブログ『慟哭は聴こえない』あらすじ紹介ページ
https://www.wp1.co.jp/blog/5739/